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新型コロナウイルス感染症の拡大により、都市部の「3密」の環境が避けられ、地方の持つ「疎(そ)」の価値に注目が集まっている。


適切に疎(まば)らな地域が暮らしやすいとする「適疎(てきそ)」の考え方を新型コロナ以前から提唱してきた コミュニティーデザイナーの山崎亮さん(47)に話を聞いた。


「福井はポジティブな人多い印象」

「福井はポジティブな人多い印象」

2012年から「適疎」を提唱する山崎亮さん。経済成長至上主義とは異なる新たな価値観の創造を目指すべきと語る=兵庫県芦屋市の事務所前

  • 満員電車では足を踏もうが、かばんを引っ張ろうが、誰も謝らない。1時間の昼休みのランチに20分並ぶ。で、1500円。都市部は異常だと思っていた。

  • 郊外に住み、必要なら都市部に行くのがちょうどいい。過密でも過疎でもない、そんな感覚を言い当てる言葉がなかった。それで2012年、著書の中で「適疎」という言葉を使った。僕は適切に疎らであることが快適だった。新型コロナウイルス禍で、適疎という言葉が注目された。もちろん見越していたわけではない

  • 過密な都市はなぜ生まれたのか。労働者、生産者、生活者、有権者…。個人にはいくつも顔がある。生産者の立場ならモノや人、金が集まれば効率がよいと考える。ただ、生活者としては生きづらいこともある。そこを覆い隠して経済成長を追い求めてきた。都市はどんどん大きくなった。お金を払うことで成り立つ楽しみも増えた。

  • 地方は都市ほどお金はない。だけど、自分で楽しいことをつくりだせれば、お金はいらない。暮らしを楽しくすることは「技術」であり、小中学校で重点的に教えるべきは、答えが一つしかない国語や数学より、答えがない図工や美術ではないか。個々の楽しみを比較せず、認め合える社会なら、適疎エリアは住みやすいはずだ。

【プロフィル】山崎亮(やまざき・りょう)さん 2005年に設立したデザイン事務所「studio―L」(大阪市)代表。人と人をつなぐ「コミュニティーデザイナー」として、住民参加型の総合計画作り、建築・景観のデザイン、公園整備のプロジェクトなどを全国で手掛ける。12年には福井市の「まちの担い手プロジェクト」に携わった。同年の著書「コミュニティデザインの時代」では、まちの将来を考える前提として「適疎」を提言した。愛知県生まれ。47歳。

  • 全国の地方に出向き、まちづくりなどのワークショップを開いてきた。コロナによってオンラインになり、地方に興味がある都市の人たちが参加しやすくなった。彼らは移住してくれるかもしれない。しかし、経済成長至上主義というマインドセット(固定化された考え方)が変わらなければ、都市部の地価下落などをきっかけに再び帰ってしまう懸念がある。

  • だから移住者と、幸福論や人生哲学について、話し合ってみるのもいい。そこで新たな生きる価値が見つかるかもしれない。都市の引力に負けず、地方の未来のために、ずっと活動してくれるかもしれない。

  • 社会を変えるのは若者だ。昔は集落の歴史や言い伝え、もめ事の収め方などを知っている高齢者が尊敬されたが、インターネット社会における物知りは、明らかに若者。年配者が若者を応援し、若者たちは年配者に感謝するという循環をつくりだすべきだ。

  • そして、都市部からやって来た人たちも応援する。地域の中で、本気でそんな人を増やしていければ面白い。コロナ感染が広がっても誹謗(ひぼう)中傷せずに、めっちゃ支え合っている地域や県とかもいい。数年後には評価されているはずだ。

  • 適疎でかつ、前向きになれるコミュニケーションが発達した地方。一朝一夕にはできないからこそ、他県もまねできない。仕事で何度か訪れたことがある福井は、ポジティブな人が多い印象。そんな地方を本気で目指してみては。

今度 の 休み の 旅行 には、「 いっぺん 福井 に 来( き) ね ま!」